どうしてみんなアイドルが好きなの

 私はこれまでずっと「アイドル声優」と呼ばれるような方々をひたすら応援してきたのですが、ふとアイドルってなんだって思う瞬間があります。もちろん私が応援してきたのは声優さんなので、厳密に言えばアイドルとは違うのかもしれませんし、アイドルの中にも色んなタイプがあるというのも理解しています。

 ここ数年、間違いなくアイドルブームというのが続いていると感じます。アイドルを本業としてやっておられる方々の活躍はもちろんのこと、声優さんにまで「アイドル性」みたいなものが求められていることは間違いないと思います。なんで声優さんにまでアイドル性が求められるようになったのかと考えれば、そう在った方が「売れる」からであって、消費者がそう在ることを望んだからでしょう。

 ではどうしてそこまでアイドル性が求められるのでしょうか。「可愛いから」って言ってしまえばそれまでです。私もそう思います。でも根源的な部分まで思いを馳せれば、「アイドルは分かりやすいから」という理由があるんじゃないかと思うんです。なんでいま自分は感動しているんだろう。なんで自分はこの人が好きなんだろう。自分はこの人にどうなって欲しいんだろう。そのために自分はどうすべきなんだろうって、アイドルはとても分かりやすい物語を私たちに与えてくれます。

 いま私たちを取り巻く現実は全く先の見えない物語です。終身雇用制は崩壊し非正規雇用など労働環境は悪化の一途を辿り、晩婚化・少子化といった社会の流れでこれまで信じられてきた「理想的な人生モデル」という「大きな物語」への信憑性が失墜しつつある中で、アイドルを応援する・アイドルに恋をするという、自分の中で完結する「小さな物語」を求める人が出現することは全く不思議なものではありません。

 アイドルは景気が悪いときに流行する、という話を聞いたことがあります。経済は発展して人口は増えて未来は明るい、みたいなこれまで信じられてきた社会のモチベーションとなるようなことが、実はそれって違うんじゃないかって思われ始めてきて、なにを信じて生きたらいいんだろう、という不安がアイドルを流行らせるのかもしれません。日本の経済がどん底に落ち込んでいるときにモーニング娘。が「ニッポンの未来はWow×4 世界がうらやむYeah×4」と歌ったように。

 ステージの上で輝く、歌って踊れる可愛い女の子たちを応援している間は、どこまでも理想的で綺麗な、分かりやすい物語を描くことができるのです。だからといってアイドルを現実逃避だと非難するつもりは全くありません。でもガチ恋はやめた方がいいとおもう。経験談。