「それでも歩いてる」という曲

 先日、2017年楽曲10選という記事を掲載したのですが、その記事を書いた直後に非常に素晴らしい曲と出会ってしまったので、気持ちの昂りを込めて新たに記事をしたためて紹介しようと思います。

それでも歩いてる

それでも歩いてる

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すごい、刺さる。

けやき坂46の「それでも歩いてる」です。曲の方向性としては乃木坂46の「いつかできるから今日できる」に近いものがあるのかもしれません。人生につまづいた者へ何かを語りかける曲のような印象を受けました。だから好きなんだ、と言えばそれまでかもしれません。でも、この曲には乃木坂のような「しなやかさ」みたいな励ましは無くて、ただただ1人の男の吐露を聴いているような気すらします。

サビの歌詞が好きです。「人生とは転ぶもの」なのだと言われます。転んだら立ち上がれと言われます。ひねくれた考えを持ったならば、一度つまづいてしまったら立ち上がれない人だって、この世にはいっぱいいるだろうと思ってしまいます。立ち上がってもまた転ぶだけだって思ってしまう人もいるでしょう。でもサビの終わりに、言い訳のように言うんです。「俺はそれでも歩いてく」と。この曲はどこか言い訳じみているように感じます。

次のサビの歌詞もまた好きです。「人生とは負けるもの」なのだと教わります。「負け方が大事なんだ」と言われます。人によってはそんな根性ではダメだと反感を覚えるしれません。そういう考えの人は、そういう考えで生きていけばいいと思います。でも一度つまづいてしまったときに、人生そのものの価値を疑問に感じてしまうときは、きっと誰しもあるはずです。そんな時に、「人生とは負けるもの」と呟いてみれば、そんなもんだなと思えるのかもしれません。で、最後に言い訳のようにこの「俺」は言うのです。「俺はそれでも歩いてく」と。

この曲は現代社会への強い反感が込められているように思います。自分の人生の価値に疑問をもって、生きる意味を見失う人が多いこの社会で、ただ生きることの何がいけないのかと言っている。人生とは成功か失敗か、勝利か敗北かという二元論ではなく、ただただ歩くことなんだと言っている。この諦観とも捉えられる言葉を10代のアイドルに歌わせるというのが、また彼のいやらしい部分でもあるのですが、「けやき坂46」というグループの声によって伝えられるからこそ伝わるものもあるようにも思えます。

もし、この曲の全てを聴く機会があれば、是非とも歌詞を読みながら聴いてください。言葉とは不完全なもので、僕がこの曲に触れて感じたことをここに全て書き残せたとは全く思えませんが、もしこの記事を読んでくれた人がどこかで行き詰ってしまって、ふとこの曲のことを思いだしてくれたらそれでいいんだと思います。