WRX S4

 WRX S4で800km弱ほど走ってきたので、忘れないうちに印象を書き留めておきます。プラットフォームを共有するレヴォーグには何度も乗っていますが、レヴォーグと感触の違いも含めた感想です。

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 ○走行性能について

ハンドリングについては驚くほど素直なフィーリングです。舵角を与えてあげると、ほぼ自分の思った通りにスススッと曲がってくれます。AWD独特のまるで空中浮遊しているかのような操舵感覚もあまり違和感を覚えない程度にはしっかりと路面を噛んでる印象を与えてくれます。これはスポーティな走行を想定した、硬めの足回りが効いているのだと思います。

曲がる性能という面では、ドライバーの思惑に反した動きを一切見せない極めて安定した走行感覚を与えてくれる車と言えるでしょう。どちらかというと、オンザレールみたいな感じ。

FRスポーツみたいな「どこまで攻めていいんだろう」みたいな不安は一切なく、どこまでも切り込んでいけるんじゃないかという気持ちになります。これは好みが分かれるところでしょうけど。

 

 ○動力性能について

エンジンはFA20型。2000ccに直噴ターボを組み合わせた、いわゆる「ハイパワーターボ」です。86・BRZに搭載されているものもFA20型の自然吸気ですが、あれとは型式名が一緒というだけで中身にはさほど共通点があるわけではないようです。

最高出力は300ps、最大トルクは40.8kg/fと、文句なしのハイパワーエンジンです。スポーツカーというよりは「スポーツセダン」という位置づけであり、ガチガチのスポーツカーではないのですが、エンジンは相応の性能を備えています。

こうしたハイパワーさを持っていながらも、穏やかに走ろうと意識すれば極めて穏やかに走ることも可能です。アクセル開度6%~13%くらいを維持して発進すると、同乗者に不快感を与えることなく発進することが出来るでしょう。

一方で、やはりAWDのトラクションを活かした爆発的な加速も外すことが出来ない見所でしょう。S#モード(後述)にセットして、グッと踏み込んでやると、2000-3000rpmくらいから一気にターボが効き始め、身体がシートに押し付けられるような、スパルタンな加速性能を見せてくれます。

言うならば「ドッカンターボ」的なフィーリングかもしれません。レヴォーグに搭載されているFB1.6DITは低回転からカバーして低速トルクを補ってくれるような印象がありましたが、S4に搭載されているFA20DITは多少のラグを感じました。しかし、一般道で常用する低回転域からターボがドカドカ効いていたら扱いづらいことこの上ありませんから、こうしたフィーリングのほうが「スポーツセダン」を標榜するS4にとっては正しいのかもしれません。

 

 ○CVTについて

CVTそのものについては賛否両論あるところでしょうけども、S4に搭載されている「スポーツリニアトロニック」というチェーン式CVTについては、素直によく出来ているなと感心しました。

S4のスポーツリニアトロニックには「I(インテリジェンス)」「S(スポーツ)」「S#(スポーツシャープ)」の3モードが搭載されており、「どのように走りたいか」というドライバーの意志によって車の味付けを変えることが出来ます。人を乗せていたり、穏やかに走りたいと思ったらIモードに入れればよいでしょう。

CVTらしい無段階変速がスムーズな加速を味わうことができます。Sモードは……Sモードはどういうときに使えばいいんでしょう……。

さて、最後のS#モードにセットすると、CVTの利点を完全に投げ捨てた8段ステップ変速がS4のポテンシャルを余すところなくタイヤにぶち込んで行きます。これはCVTでありながら、さながらMTのごとく1速~8速まで段階的に変速していくヤツです。なんでCVTのなのにわざわざステップ付けるんだよ、とかいう意見もあるでしょうけど、「よく出来たAT」を好む自分としては満足です。CVTの疑似MTモードにありがちな、変速時のギクシャク感もほとんど感じられません。見事なほどスムーズに変速していきます。

 

 ○乗り心地につい

「スポーツセダン」というコンセプトで、スポーティさもありながら日常的な使い勝手も確保してありますよ、というのがS4の強みですが、乗り心地については多少のウィークポイントも見られました。

  ①やはり硬めの足回り

コーナリング性能と乗り心地というのはトレードオフみたいなところがあるので、仕方ないんですけど、やはり他のセダンと比べると硬いなという印象を受けます。不快になるほど硬いわけではないので、硬いっていうか、固めてあるなっていうイメージですけど。路面状態のいいところでは全然感じませんが、凹凸のある路面や舗装が悪いところだと結構ショックが伝わってきます。

まあ、S4の場合、乗り心地よりは走りのほうにリソースを振り分けていると考えるべきでしょう。乗り心地を求めるならレガシィB4を買ってくれと、そういうわけなんでしょう。

  ②トルクが強すぎて強すぎるクリープ

↑自分でも何言ってるかわからないんですけど、車を停止させるときって止まる瞬間にブレーキの踏力緩めて、ショックのないように止めるじゃないですか。AT車だとクリープがあるからなかなかショックをゼロにすることは難しいんですけど、S4はこの辺かなりシビアです。いかんせんトルクが強いものですから、ブレーキで抑えつけるのにもわりと強く踏まなくてはいけない。この車でショックをゼロにして止まるのはなかなか難しいです。スポーツATの宿命でもありますけどね。

  ③オミットされた後席の快適装備

レヴォーグとの比較なのですが、レヴォーグには標準装備の後席USBがないです。っていうか後席リクライニングしません。あとレヴォーグよりも微妙に後席狭い気もしないでもないですけど、もしかしたら変わらないのかもしれません。後席の快適性を求めるならレヴォーグ買えってことなんでしょう。

  ④容赦ないロードノイズ

そんな酷いわけでもないんですけど、高級セダンのノリでS4に乗るとロードノイズに頭を抱えるかもしれません。タイヤがSP SPORT MAXX 050というのを履いているのですが、これがわりとグリップ志向ということもあって、高速走行時などは結構ロードノイズが響きます。とはいえB型からは遮音対策が施されているのでA型よりはマシかもしれません。A型に乗ったことがないので違いが分からないのですが。遮音性を求めるならレガシィB4買えってことなんでしょう。

 

 

 ……ざっと思いつく限りはこんな感じでしょうか。色んな評価があると思いますが、万能な車を作るなんて出来ませんから、「スポーツセダン」というコンセプトからするとほぼ満点のような車じゃないかと思います。スポーツ走行がしたいならSTIを買えばいいわけですし、ツアラー性能を求めるならレヴォーグを買えばよいわけです。同じプラットフォームを共用してる車種内で、用途に応じてクルマ選びが出来るのはいいですね。

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